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think,think,think!

基本的には自分の思考を整理する場として。

【EdTech記事翻訳】カーンアカデミーが教師用ツールを開発

結局は学校というプラットフォームに回帰するのか

カーンアカデミー、MoocやCourseraなど学習時の環境の壁を取り払うサービスが多く出ている。はじめてこれらの存在を知った時、これこそ教育格差を埋めることができるシステムだ!と心が震え上がるような感覚があった。

後から、そもそもこういったオンライン学習システムでは「学ぼう」と思っている人はアクセスできるが、そもそも学ぶ必要性を感じていない人にとってはアクセスできないものなのではないかという考えが頭をもたげてきた。苅谷剛彦先生の言葉を借りれば、インセンティブディバイドの問題を克服するどころか、伸張させうるものである。

そこで、今回の学校との提携という制度にはある部分では納得した。どんな子でも一様に通う、公立学校の制度から変えていくことは、教育レベルの底上げという点において(少なくとも義務教育に通うことは保障されている先進国に限っては)有効であろう。私が関わっていたTeach for Allグループに通底する考えだ。

しかし今回の導入には乗り越えなければならない課題も多く存在するであろうと感じる。教師の負担などもそうだが、一番は自治体格差ではないだろうか。費用負担もそうだが、そもそも課題が多すぎて組織が疲弊しているような自治体では今回のような導入に協力的な姿勢を見せられる場合ばかりではないだろう。昨今、アメリカに限ったことではないが、自治体によって居住者の階層が大きく偏っている。高所得者が多く、または重要産業が発達し税収入の多い自治体はより多くの制度を導入でき、そうでない自治体との格差がより開いていく。このような悲観的な見方もできるのではないだろうか。

もちろん、どんな制度の導入であれ課題はつきものであるから、まずは導入ありきで考えることも大事である。日本の3,40年先をいくと言われるアメリカで是非、有効な実践例を残して欲しい。引き続きウォッチしていこうと思う。

以下はKhan Academy’s New ‘Teacher Aid’ Tool Goes for a Test Drive in Southern Californiaより。

カーンアカデミーの新しい「先生お助け」ツールが南カリフォルニアで試験運用を始めた

カーンアカデミーといえばオンライン動画を思い浮かべる人が多いだろう。それら動画の大部分は、創業者でCEOのサルカーンが、いとこの数学の勉強を助けるために、2005年から自宅のクローゼットで撮りためてきたものである。しかし、その構図が少しずつ変わってきている。

マウンテンビューに拠点を持つ非営利団体であるカーンアカデミーは、南カリフォルニアの5つの群教育省と、1学区と提携し、教室における教員の活動を支援するツールの導入を開始することを発表した。

カーンはEdSurgeに対して「本製品は、多くの規範や熟慮されたコンテンツから、最適な内容を提示するように設計されている。教師は新たな視点を獲得できるだろう」と話した。

教師たちはいつでも、カーンアカデミーの無料オンラインチューター教材に接続できるようになっている。補習のため、生徒にカーンアカデミーのサイトを使わせることもできるし、教室にあるコンピューターで生徒たちにオンラインクイズをさせることもできる。

カーンによれば、組織は今、学校のカリキュラムの中で特に大事な部分に対するサービスを作ることに、関心を向けているようだ。彼が「先生お助け」と呼んでいるツールを使うものだ。

この製品によって、どの教科を受け持つ教員でも、オンライン宿題を作ってそれを共有することができるようになる。その宿題は、基本講座や双方向講義を含んで6万以上にものぼる、カーンアカデミーにある動画やその他教材を参考にできる。

他にも、データをまとめてみられるページがあり、そこでは生徒がどれくらいカーンアカデミーの講座を視聴しているか、宿題を終わらせるためにどれくらい時間がかかっているか、どこでつまづいているかを確認することができる。

教師たちはGoogle for educationを使うことで、G Suiteのアカウントとカーンアカデミーのシステムを統合することができるようにもなっている。特に、Gooogle Classroomを使うことでクラス名簿を簡単にカーンアカデミーのシステムに移植できるようになっており、これによってカーンアカデミーの宿題とその取り組み成果のデータをすぐに回収できるのだ。(Googleのサービスを使わずに、カーンアカデミーの支援ツールを使うこともできる)

重要なのは、教師が生徒の学びを個別最適化するのを支援できることだ、とカーンはいう。「教師は問題をみつけて、習熟度の差があるところに印をつけさえすれば、あとはカーンアカデミーを利用するとで、問題が起こっている生徒に対して学習速度を調整することができるのだ。生徒にとっては勉強の幅が広がるし、教員にとっては生徒の理解度を簡単に把握できるので、授業でどこを復習すべきかが明確になるのだ」

一人でカーンアカデミーを利用する人に比べて、教師と一緒に利用する人はサイト滞在時間が3倍以上も長い、という調査結果が、このツール作成を後押しした。

はじめは、ロングビーチ学区、オレンジ郡の教育省、サンバーナーディーノ郡管轄の学校、リバーサイド郡の教育省、インペリアル郡の教育省、ロサンゼルスの教育省とカーンアカデミーが協働してツールを導入することにしている。全体では300万人の生徒に影響することになる。

「言語の違いや学習歴の問題によって、いつも親に宿題を手伝ってもらえない生徒たちにとって大きなチャンスだと思う」とロサンゼルス郡教育省のデブラはいう。「より多くの生徒、特に大学第一世代や貧困層にいる生徒たちが、大学に通えるようにしたい」オレンジ郡教育省のアルが付け加えた。「カーンアカデミーは教育格差を縮めることにおいて、非常に役立つ」

広報によると、カリフォルニアで3番目に大きく、約77000人の生徒が在籍するロングビーチ区では、教科や学年を問わずカーンアカデミーを導入するとのことだ。5郡の教育省は、カーンアカデミーの教室向け新ツールの稟議を進めていくとみられる。

協力関係のもとで、カーンアカデミーは自治体に対し、教員や管理職向けトレーニングを提供する予定だ。今秋にツールが一般公開されることを見越して、逆に自治体からはツールの改善点についてフィードバックを受け取れるようにしている。

しかし、具体的な施策はまだない。協力関係を結ぶことに対して前向きな姿勢を見せたDuardoも、製品がどのように導入されるのか、夏休みの間はどうするのかについて、まだ検討に至ってはいないことを認めた。カーンアカデミーとの協力について最初に手を挙げたMijaresは、タイミングについては懸念を示していない。「いまや教育は日進月歩だ。途中で止めることはないし、夏なんて能力開発が一番盛り上がる時期だ。」

カーンもまた楽観的である。「どう進めていくか、熟慮すればするほどおもしろくなっていくはずだ。テーマも学習方式も多様化させ、軽いクイズや評価方式も増やしていきたい。データをもっと素早く取れるようにもしたい」

カーンアカデミーの守備範囲が変わってきていることについて問われると「こういうサービスがもっと出てくる世の中になればいいなあ」と答えた。